株式投資は2つのゲームに分類できる
株式投資には、ざっくり分けて2つのゲームがあります。
- 未来を当てにいくゲーム(マクロ予想・テーマ株・短期売買)
- 価値より安いものを、静かに拾って待つゲーム(ボトムアップ・バリュー投資)
前者は、華やかでニュース映えしますが、
個人投資家がプロと同じ土俵で戦うには、かなりハードモードです。
一方、後者の「王道の株式投資」はもっと地味です。
- いい企業を
- 妥当な価値より安く買い
- あとは静かに待つ
やっていることはシンプルですが、
個人投資家にしかできない強みを最大限に活かせるやり方でもあります。
トップダウン vs ボトムアップ〜どちらのゲームを選んでる
株式投資のアプローチは、大きく2つに分けられます。
トップダウン・アプローチ(マクロ&テーマ予想)
流れとしてはこんな感じです。
- 世界経済や金利、為替など、マクロ環境を予測する
- その予測から「有利になる業界・国」を選ぶ
- その中から個別銘柄やETFを選び、タイミングを見て売買する
プロの運用会社やヘッジファンドは、
この「トップダウン」をベースにしているところが多いです。
ただ、ここには前提条件があります。
- 他の投資家より「早く」
- 他の投資家より「正確に」
- しかも「何度も連続で」当て続ける
必要があります。
金利の予想が少しズレる。
テーマの旬を読み違える。
タイミングだけ外す。
どこか1つでも外すと、
芋づる式に他の前提も崩れてしまう。
これは、
フルタイムで情報に張り付いているプロでも難しいゲームです。
まして、
本業の合間に投資をする個人がここで勝ち続けるのは、不可能に近いハードモードです。
ボトムアップ・アプローチ(企業に集中)
もう一方が、「ボトムアップ」です。
やることはシンプルです。
- 個別企業にじっくり向き合う
- その企業の本質的価値(ざっくりの妥当株価)を考える
- その価値より十分安い価格で買う
- あとは市場が気づくまで、のんびり待つ
将来のGDP成長率や金利の微妙な変化を当てる必要はありません。
必要なのは、
- 「この会社は何でお金を稼いでいるのか」
- 「そのビジネスは続きそうか」
- 「その割に、この株価は安いか」
という、
いま分かることに集中する姿勢です。
このボトムアップこそが、
個人投資家にとっての「王道の株式投資」ゲームです。
機関投資家 vs 個人投資家〜ルールが違えば勝ち方も変わる
ここで一度、「誰と同じゲームをしているのか」を整理しておきます。
機関投資家のゲームルール
機関投資家(投信・年金・ファンドなど)は、だいたいこんな制約を抱えています。
- 預かり資産が巨大で、「すぐ買えない・すぐ売れない」銘柄が多い
- 毎月・毎四半期ごとに成績をレポートしないといけない
- 市場平均から大きく負けると、資金流出・クビのリスクがある
- お客さまから「なぜ何もしていないのか」と聞かれるので、
常に「何かしている」姿勢を見せざるを得ない
つまり、
「長期で待つ」よりも、「短期で負けない」ことを優先せざるを得ない
という立場にあります。
だから、マクロ・テーマ・短期の需給に敏感になるのは、ある意味当然です。
個人投資家のゲームルール
一方、個人投資家のルールはまるで違います。
- 月次レポートを出す必要はない
- ベンチマークに負けても、誰にも怒られない
- 小型株・ニッチ銘柄も、平気で買える
- 「今は何もしない」という選択肢を自由に取れる
つまり、個人投資家の最大の武器は、
「時間を味方につけられること」。
- すぐに結果を出さなくていい
- 安くなるまで、何年でも待てる
- 買ったあとも、価値が市場に認識されるまで待てる
この「待てる」というメリットをフルに活かすと、
王道の株式投資は一気にラクになります。
不動産投資と株式投資の共通点〜「市場価格以下で良いものを買う」
不動産投資の世界でも、
とてもシンプルな鉄則があります。
短期で利益を出すコツは、
“市場価格以下”で“良い物件”を買うこと。
当たり前すぎて笑ってしまうかもしれませんが、
株式投資でも本質はまったく同じです。
- 「良い物件」=「良いビジネス」
- 「市場価格以下」=「本質価値から見て割安な株価」
不動産で儲ける人は、
- 自分の地元や得意エリアに絞り
- 実際に足を運び、現場を見て
- 相場感を身につけたうえで
- 安く買えるチャンスだけ、静かに拾っていきます
これを株式に翻訳すると、
- 自分が理解できる業界やビジネスに絞り
- 決算書や事業内容を地道に読み
- 「この会社なら、これくらいの価値はある」と見立てを持ち
- その見立てより十分安くなったときだけ買う
という形になります。
どちらも共通しているのは、
「全てを追いかけない」
「分からないものには手を出さない」
「チャンスは待つもの」
という姿勢です。
株式でいう「良い物件」とは何か?
では、「良い物件」を株式に置き換えると、
どんな会社になるでしょうか。
完璧な企業を探す必要はありませんが、
王道の株式投資では、例えばこんなポイントを見ます。
- 何を売ってお金を稼いでいるかが、シンプルで分かりやすい
- 長く続きそうなビジネスモデルを持っている(流行りもの一発ではない)
- 利益率やROEなど、収益性がそこそこ以上
- 借金まみれではなく、財務が極端に脆くない
- 経営陣の言っていることと、数字の動きが大きく矛盾していない
ここまで見たうえで、
「この会社なら、1株◯◯円くらいまでは“合理的”だよね」
という、自分なりのざっくりした本質価値を考えます。
そして、市場価格がそれを大きく下回っているときだけ、
少しずつ買っていく。
不動産でいうところの、
- エリアを知り
- 相場を知り
- 「これは安い」と思える物件だけ買う
という動きを、株式でやっているだけです。
個人投資家の最大の武器:「待てること」を設計に入れる
王道の株式投資では、
「待つ」という行為も、ちゃんと戦略に組み込みます。
大きく分けると、3つの「待つ」があります。
① 安くなるのを「待つ」
- 企業の本質価値は変わっていないのに
- 市場全体の不安や、一時的なニュースで
- 株価だけが過剰に叩き売られている
そんなタイミングは、年中いつでも来るわけではありません。
だからこそ、
- 普段から企業を研究しておき
- 「この会社なら、この水準まで来たら買いたい」と決めておき
- その価格まで来るまで、平気で何ヶ月・何年も待つ
という設計が効いてきます。
② 買ったあと、市場が気づくまで「待つ」
割安で買えたとしても、市場がすぐに評価してくれるとは限りません。
- 「地味だけど強い会社」は、そもそも注目されにくい
- 業績改善が数字に出るまで、時間がかかることも多い
だからこそ、
個人投資家のメリットである「時間の自由度」を使います。
- 四半期ごとに評価されない
- 半年・1年、気長に様子を見られる
- 必要なら3年くらい平気で持ち続けられる
これは、「月次成績」を問われる機関投資家には真似しづらい動きです。
③ 自分が理解できるようになるまで「待つ」
もうひとつ大事なのは、
「よく分からないけど、みんな買っているから買う」
をやらないことです。
- ビジネスモデルがよく分からない
- どうやって利益を出しているのかピンとこない
- 規制・技術など、理解すべきポイントが多すぎる
こういう銘柄は、一度「見送り」にしてしまって構いません。
- 勉強して分かるようになってから再チェックする
- それでもよく分からなければ、永久にスルーでも良い
「分からないなら、買わない」という選択肢を素直に取れるのも、
個人投資家の大きな特権です。
王道の株式投資・3つのシンプルなルール
ここまでをまとめると、
個人投資家にとっての「王道の株式投資」は、驚くほどシンプルです。
- ゲームを選ぶ
- マクロ予想ゲームではなく、
「ボトムアップで、良いビジネスを安く買うゲーム」を選ぶ。
- マクロ予想ゲームではなく、
- 自分の“地元”だけを見る
- 不動産で地元エリアを歩き回るように、
自分が理解できる業界・企業に絞る。 - 分からないものには手を出さない。
- 不動産で地元エリアを歩き回るように、
- 待つことを前提に設計する
- 安くなるまで待つ。
- 買ったあと、市場が評価するまで待つ。
- 自分が理解できるようになるまで待つ。
この3つを守ると、
「ニュースを追い続けて疲弊する投資」から、
夜ちゃんと眠れる投資
に変わっていきます。
機関投資家は、
巨額の資金と優秀なアナリストチームを持っていますが、
同時に「待てない」というハンデも抱えています。
個人投資家は、
情報量では勝てなくても、
時間とシンプルさで勝てるゲームを選ぶことができます。
それこそが、
王道の投資のいちばん大きなメリットです。