便利だと損失が増える?
スマホひとつあれば、
世界中の株やETFにいつでもアクセスできる時代になりました。
アプリを開いて数回タップするだけで、
持っている資産はすぐに現金に変えられます。
これは、間違いなく現代がくれた大きな恩恵です。
昔に比べて、投資はずっと身近で、柔軟になりました。
しかし、この「高い流動性」は、
同時にとても静かな罠にもなります。
いつでも売買できる環境は、
「今なにかしなきゃいけない」という錯覚を生みやすい
この錯覚に振り回されないための「投資の土台のつくり方」をまとめてみました。
「便利で損」をすることの証明
最近の調査では、こんなデータが出ています。
- 2024年の個人投資家の平均リターン:+16.5%
- 同じ期間のS&P500指数のリターン:+25.02%
個人投資家の成績は、市場平均を約8.5%も下回っていたという結果です。
注目したいのは、
- 「どの銘柄を買ったか」よりも「いつ売買したか」
で差がついている、という点です。
多くの投資家は、
相場が一時的に崩れた局面で慌てて売り、
その後の回復を「外から眺める側」に回ってしまいます。
- 下がったときに怖くなって手放す
- 上がり始めてから「やっぱり買えばよかった」と追いかける
- 結果として「安く売って、高く買う」動きになってしまう
このサイクルを繰り返すと、
どれだけ良い商品に投資していても、
市場全体の成長から取り残されてしまいます。
「コントロールできている気がする」錯覚
なぜ、こんなことが起きるのでしょうか。
理由のひとつは、
私たちが「高い流動性」と「コントロール感」を
無意識に結びつけてしまうからです。
- いつでもアプリを開いて値動きを確認できる
- 気になったら、すぐに売ったり買ったりできる
この状態が続くと、
「ちゃんと見ている自分は、状況をコントロールできている」
という感覚が生まれます。
数字がチカチカ動いている画面を見ていると、
- 今すぐ何かしないと、チャンスを逃すかもしれない
- 下がっているうちに逃げないと、大変なことになるかもしれない
というプレッシャーが、じわじわかかります。
ただ、残念ながら、市場は
「頻繁に動いた人」に報酬をくれるわけではありません。
むしろ歴史的には、
「長期で静かにポジションを持ち続けた人」の方が、
成果を受け取っているケースが圧倒的に多い
というデータが積み上がっています。
戦略は「たった10%」という話
投資の世界でよく挙げられる3つの要素があります。
- 心理面(メンタル・感情のコントロール)
- 資金管理(ポジションサイズ・リスクの取り方)
- 戦略(どこで買ってどこで売るか、というシステム)
多くの人は「戦略」をとても重く見ますが、
ベテラン投資家ほど、比率はこう変わっていきます。
- 心理面:60%
- 資金管理:30%
- 戦略:10%
伝説的なトレーダー、エド・スィータは
こんなエピソードを残しています。
投資戦略の講義(全10週間)で、
実際に「戦略そのもの」を教えたのは1週間だけ。
残り9週間は「どんな優れたシステムでも必ず損失は出る」
という事実を、受講者に受け入れさせる時間に使った。
どんなに優れた戦略でも、
- 連敗する時期がある
- マイナスが続く期間がある
- 思った通りに動かない局面がある
これは避けられません。
問題は「戦略の優劣」そのものより、
その現実を、どれだけ冷静に受け入れる準備があるか
の方です。
勉強法と同じで、「方法」より「続ける土台」
投資の話になると、とたんに
- どの戦略が最強か
- このインジケーターは優秀か
- 誰の手法が本物か
という議論に集中しがちです。
ですが、勉強や仕事の世界で考えると、
少し見え方が変わります。
- 有名な人の勉強法を真似してみる
- 最初は「これならできそう」と思う
- 実際にやってみると、続かない
- 別のやり方を探して、またゼロからやり直す
こうした経験は、誰にでもあると思います。
本当の問題は、
方法そのものではなく、
「続けられる前提」や「心構え」が整っていないこと
だったりします。
投資も同じで、
- 少し含み損が出た瞬間に不安になってやめてしまう
- 戦略を変えてばかりで、検証する前にリセットしてしまう
- 「損失が出ること」を前提にしていない
という状態だと、
どんなに優れた戦略でも、結果は出にくくなります。
「動き続ける準備」ではなく「耐える準備」をしておく
ここまでをまとめると、
流動性の高い今の市場で大事なのは、
どれだけ素早く動けるか
ではなく
「動きたくなっても、あえて耐えられる構造」をつくれるか
という点です。
具体的には、たとえばこんな準備が考えられます。
- 生活費と投資資金をはっきり分ける
→ 生活に直結するお金を、相場の上下にさらさない - 投資前に「許容できる下落幅」を数値で決めておく
→ 一時的なマイナスを「想定内」として受け止められるようにする - 自分が信頼する戦略・方針を、
「損失が出たときも含めて」言語化しておく - アプリを開く回数・確認する頻度を、自分で制限する
→ 不要なノイズをわざわざ浴びに行かない
こうした「前準備」がないまま市場に入ると、
値動きに合わせて感情が上下し、
そのたびにポジションをいじりたくなります。
結果として、
- 戦略が育つ前に、毎回リセットする
- 長期の複利効果から外れてしまう
という形で、「時間」を味方につけるチャンスを逃します。
流動性の時代だからこそ、「何もしない力」が差になる
投資の世界では、次のような言葉があります。
「市場でいちばん成績が良かったのは、
死んでいた人と、口座の存在を忘れていた人」
もちろん極端な例ですが、
言いたいことはとてもシンプルです。
頻繁に動こうとするほど、
自分で自分のリターンを削ってしまうことが多い。
今の市場は、私たちに
- いつでも売買できる自由
- どこからでも相場を見られる利便性
を与えてくれました。
だからこそ、必要になるのは、
「自由に動けるからこそ、あえて動きすぎない」
という、逆方向の技術です。
そのために磨くべきは、
- 心理面(感情との付き合い方)
- 資金管理(どんな下振れにも耐えられるポジション設計)
- そして、その土台の上に乗る「戦略」
という順番です。
戦略そのものは、全体の10%。
残りの90%は、「どう付き合うか」の設計にかかっています。
流動性が高い今の時代で、
時間を味方にした投資を続けるためのポイントは、とても地味です。
- すぐに答え合わせをしようとしない
- 下がる局面も「想定内」に含めたうえで始める
- 一度決めた方針を、すぐに捨てずに検証する時間を置く
この地味な3つを積み重ねていくことが、
結果として「長期での大きな差」につながります。
自由に動ける時代だからこそ、
「動かない力」を鍛えておくことが、
投資生活を長く、豊かにしてくれるはずです。