かつて、「投資の神様」バフェットの
2倍の運用成績を出した投資集団がいましたが、
ところがこのファンドは、
アジア通貨危機の余波の中で資産の9割を失い、破綻しました。
バフェットを超える天才投資集団が消えた理由
かつて、「投資の神様」バフェットの
2倍の運用成績を出した投資集団がいました。
- 年間利回り:約40%
- 運用額:10兆円超
- 利益:兆円単位
- それが4年間続いた
しかもメンバーは、
- ノーベル経済学賞受賞者2人
- FRB(米国中央銀行)の元副総裁
- ウォール街の大手投資銀行の元副会長
という、まさに「ドリームチーム」でした。
ところがこのファンドは、
アジア通貨危機の余波の中で資産の9割を失い、破綻しました。
原因は、数学モデルのミスだけではありません。
「自分たちだけは大丈夫だ」と信じてしまった、人間側のバイアス
が原因です。
行動経済学者モッテルリーニは、
「この集団の中に、たった1人でも心理の罠を考慮に入れる人がいれば破綻は防げた」と述べています。
投資で失敗するのは「頭が悪いから」ではなく、
頭の良さを簡単に吹き飛ばす心理のクセに気づいていないから。
この記事では、投資家がハマりやすい代表的なバイアスを7つに整理します。
1.勝者敗者効果(最近の値動きに振り回される)
最近上がっている株は「もっと上がりそう」。
最近下がっている株は「もうダメそう」。
そんなふうに直近の値動きに過剰反応してしまうクセを、
行動経済学では「勝者敗者効果」と呼びます。
- 上がっている銘柄:
→ 「勢いあるし、今からでも乗れるはず」と楽観的になりやすい - 下がっている銘柄:
→ 「まだまだ下がるに違いない」と悲観的になりやすい
先ほどの“天才ファンド”も、
自分たちが大儲けしていた新興国債券・株式について、
「これまでうまくいったから、これからも大丈夫」
と、楽観シナリオを前提にしてしまいました。
対策のヒント
- 「直近6ヶ月の値動き」と「過去5年の業績・ビジネスモデル」を必ず両方見る
- 「最近上がっているから買う」「最近下がっているから売る」という理由だけで動かない
2.郷土愛バイアス(身近な国・会社に偏りすぎる)
世界の株式時価総額の国別シェアはおおよそ、
- 米国:60%台
- 日本:数%台
- イギリス:数%台
くらいです。
本来、グローバルに分散投資をするなら、
この比率に近づくはずです。
ところが実際は、
- アメリカ人の投資先:9割以上がアメリカ株
- 日本人の投資先:ほぼ日本株
- イギリス人の投資先:大半がイギリス株
という具合に、自分の国に極端に偏ることが多いです。
「知っている会社の方が安心」
「自分の国だからなんとなく応援したい」
という気持ちは自然ですが、
リスクもリターンも、その国ひとつに依存してしまうことになります。
対策のヒント
- インデックスや投信を使って、「世界全体」を1本持つ
- 個別株を自国中心にする場合でも、NISAや別枠で海外比率を少しずつ増やす
3.自信過剰バイアス(「自分だけは当てられる」と思ってしまう)
経験を積んだ投資家ほど、ハマりやすい罠です。
有名な心理テストがあります。
A:すでにコインは投げられているが、表か裏かは知らされていない
B:コインはまだ投げられていない
どちらも確率は1/2ですが、
多くの人は「Bの方に多く賭ける」傾向があります。
「これから起こること」の方が、
自分のコントロールが効きそうに感じてしまう
投資でも同じです。
- 相場が動く前:
→ 「今回は読めている」と感じやすい - 相場が動いたあと:
→ 「あれはイレギュラーだった」と、自分の読みの甘さを軽視しやすい
天才ファンドも、
「自分たちのモデルと人脈なら、異常事態でもコントロールできる」
という自信が、レバレッジのかけすぎや、ポジション解消の遅れにつながりました。
対策のヒント
- 「自分の予想が外れた前提」で、事前に3つのシナリオ(順調/普通/悪化)を書いておく
- ポジションサイズを決めるときは、「どれだけ勝てるか」より、「どこまで負けて大丈夫か」で決める
4.損失回避バイアス(損は2倍苦しく感じる)
行動経済学では、
同じ金額でも、得した喜びより、損した苦しさの方が約2倍大きく感じる
と言われます。
この「損失回避」のせいで、投資家は
- 含み損が出ているポジションほど「損切りできない」
- 含み益が出ているポジションは「早く利確したくなる」
という行動をとりがちです。
結果として、
- 小さな利益だけを素早く確定
- 大きな損だけを長く抱える
という逆噴射ポートフォリオが出来上がってしまいます。
対策のヒント
- 買う前に「この銘柄は、どの条件になったら手放すか」を書いておく
- 評価額の変化ではなく、「最初に決めた前提が崩れたかどうか」で売買判断をする
5.アンカリング(最初に見た数字に縛られる)
- 「この株は自分は3,000円で買った」
- 「コロナ前は5,000円だった」
こうした数字が「基準(アンカー)」として頭に残り、
それを基準に今の価格を高い/安いと判断してしまうバイアスです。
本来、投資判断に必要なのは、
- いまの業績・将来性から見た適正価値
- そこからどれくらい“割安・割高か”
のはずですが、
「自分の買値に戻ってほしい」
「昔の高値まで戻るはずだ」
という思いが強いと、
合理的な撤退や乗り換えを妨げてしまいます。
対策のヒント
- 画面から「取得単価」を一旦隠して、今の情報だけで投資判断を考えてみる
- 「自分の買値」は基準ではなく、「たまたまその日に約定した価格」と割り切る
6.確証バイアス(自分に都合のいい情報だけ集める)
人は誰でも、自分の意見を「証明してくれる情報」を好み、
それと矛盾する情報はスルーしがちです。
投資でも、
- 気になっている銘柄の「ポジティブなニュース」ばかり探す
- ネガティブ材料を見つけても、「一時的なノイズだ」と片付ける
- SNSやYouTubeでも、自分と同じ意見の人だけフォローする
という行動が自然に起こります。
これが積み重なると、
「世界の情報」ではなく、「自分の信じたい世界」だけを見ている状態
になります。
対策のヒント
- 気になった銘柄について、「買いの理由」と同じ数だけ「売りの理由」を探す
- あえて、自分と逆の立場の人(弱気・強気どちらでも)の意見を1つは読む
7.サンクコスト・バイアス(ここまでの労力・損失に縛られる)
- 「ここまで勉強してきたし、今さらやめられない」
- 「ここまで損が膨らんだのに、今切ったら全部無駄になる」
すでに使ってしまった時間・お金・労力を「取り返したい」という気持ちに縛られるのが、サンクコスト・バイアスです。
投資では特に、
- ずっと追いかけてきた銘柄
- 調査や勉強に時間をかけたテーマ
に対して、冷静な撤退が難しくなります。
しかし、過去にいくら注いだかは、将来のリターンには関係ありません。
重要なのは、
「今、この瞬間から見て、そのお金を別の場所に動かした方が、将来プラスになりそうか」
だけです。
対策のヒント
- 「もし今現金を持っていて、この銘柄を保有していなかったとしても、改めて同じ額を投資するか?」と自問してみる
- 答えがNOなら、「保有している理由はサンクコストではないか?」と疑ってみる
バイアスを「消す」のではなく、「織り込んで設計する」
ここまで7つのバイアスを挙げましたが、
人間である以上、これらを完全にゼロにすることはできません。
大事なのは、
- 「自分はバイアスの影響を受けているかもしれない」と前提すること
- その前提で、「壊れにくい投資のルール・構造」を先につくること
です。
- 生活費と投資資金をきちんと分ける
- 一発逆転ではなく、「損をしても立て直せるポジションサイズ」にする
- 長期で持つ前提の資産は、「最初に設計して、あとは触りすぎない」態勢にする
こうした“構造”を整えておくと、
バイアスに揺さぶられる場面そのものが減っていきます。
投資で本当に差がつくのは、
「どの銘柄を買うか」以上に、
自分のバイアスに気づき、時間を味方につける設計ができているかどうか
です。
数字より先に、「メンタルの構造」を整えておきましょう。