ネット証券の登場で、私たちはとても恵まれた時代に生きています。
- 売買手数料はゼロ
- NISAで利益は非課税
- スマホひとつでいつでもどこでも取引できる
一見すると、個人投資家にとって追い風しかないように見えます。
ところが、カルフォルニア大学の有名な調査では、
「ネット証券の登場後、多くの投資家の成績が悪化した」
という結果が出ています。
理由はとてもシンプルでした。
手数料が安くなった結果、売買回数が増えすぎて、
節約した手数料以上の損失を出してしまったから。
環境が良くなったのに、行動パターンの勘違いで逆効果になってしまったわけです。
この記事では、
こうした「投資のよくある勘違い」を7つに絞って整理しながら、
- なぜその勘違いが危険なのか
- 代わりにどんな考え方を持てばよいのか
をお伝えしていきます。
勘違い①:手数料が安ければ安いほど有利になる
ネット証券の最大のメリットは、手数料の安さです。
- 窓口だと 数千円かかる取引が
- ネット証券なら 0円〜数百円でできる
これは、「長期でゆっくり資産を育てる人」には、確実にプラスです。
しかし、このメリットがそのまま「成績アップ」につながるとは限りません。
カルフォルニア大学の調査では、
ネット証券の登場後、投資家の売買額は約1.7倍に増えました。
- 以前は月10万円分の売買だったのが
- 月17万円分に膨らんだ
手数料が安くなった分、
「せっかくだから、もっと回そう」
「小さな値動きも取りにいこう」
と、取引そのものが増えた結果、
手数料の節約以上に、売買で損失を広げてしまったのです。
本来、
- 手数料が安い
- 少ない回数で
- 長期で持つ
この組み合わせで初めて、手数料のメリットは最大化します。
「安くなったから、たくさん動こう」ではなく
「安くなったからこそ、落ち着いて長期前提で持てる」
と考えた方が、結果的に有利になりやすいです。
勘違い②:取引回数が多い=積極的で賢い投資家
SNSや証券アプリの画面を見ると、
毎日のように売買している人が、とても「上級者」に見えます。
- 日々の値動きを細かく追いかける
- こまめに利確・損切り
- チャートにたくさん線が引いてある
こうした姿は「プロっぽく」見えますが、
それがそのまま成績の良さにつながっているとは限りません。
むしろ、多くの研究で、
取引回数が多い投資家ほど、成績は悪くなりやすい
という傾向が出ています。
理由はシンプルです。
- 売買するたびに、スプレッドや手数料の「目に見えないコスト」が積み重なる
- 判断回数が増えるほど、感情に振り回される場面が増える
- 「いつも何かしていないと不安」という心理に陥りやすい
本来、個人投資家の最大の強みは、
「頻繁に評価されないこと」
「待てること」
です。
取引回数が少ないからといって、
決して「サボっている」わけではありません。
「動かないで済む構造を作れている」とも言えます。
勘違い③:長期投資=ただ放っておけばいい
長期投資=ただ放っておけばいい
「短期売買は危険、これからは長期投資だ」という考え方自体は、その通りです。
しかし、
「長期投資=一度買ったら、何も考えずに放置しておけばいい」
になってしまうと、別の危険が出てきます。
- 生活費と投資資金がごちゃ混ぜ
- いつお金が必要になるか、時間軸を決めていない
- 企業のビジネスモデルや財務が崩れても、「長期だから」と理由をつけて持ち続ける
こうした状態は、
「長期投資」ではなく「放置」
です。
長期投資が機能するのは、
- 生活防衛資金と投資資金が分かれている
- 5年〜10年以上、使う予定のないお金で運用している
- 買う時点で、「この会社がダメになったら、どこで見直すか」を決めている
といった最低限の設計が整っている場合です。
時間を味方につけるには、
「何も考えない」ではなく
「最初にきちんと考えて、あとはあまり触らなくていい状態にしておく」
ことが必要になります。
勘違い④:高配当株ならとりあえず安心
高配当株は、個人投資家にとても人気があります。
- 毎年配当がもらえる
- 「配当=不労所得」という分かりやすさ
- 持っているだけで、お金が入ってくる心地よさ
ただ、
「配当が高い=安全でお得」
とは限りません。
- 配当利回りが高く見えるのは、単に株価が大きく下がっているだけのケースも多い
- 無理な水準の配当を続けた結果、業績悪化 → 減配 → 株価急落、というパターンもある
- 高配当株ばかりに偏ると、業種・地域のリスク分散が効かなくなる
本来、配当は
「企業が稼いだ利益の一部を、株主に還元する仕組み」
にすぎません。
- ビジネスとして、今後も利益を出し続けられそうか
- 配当を支払っても、投資や研究開発に十分なお金を回せているか
といった中身のチェックがあって初めて、
配当は「おまけ」ではなく「意味のあるリターン」になります。
勘違い⑤:NISAだから、損しても大丈夫
NISAはとても優れた制度ですが、
よくある勘違いがこれです。
「NISAなら、多少リスクを取っても大丈夫」
「どうせ非課税だし、チャレンジ枠にしてもいいよね」
しかし、NISAがしてくれるのは
- 利益が出たときの「税金をゼロにしてくれること」
だけです。
- 損失を補填してくれるわけではありません
- NISA枠は一度使うと戻らない“有限の権利”です
言い換えると、
本来じっくり育てたい、堅実な資産にこそNISAを使う方が合理的
なのに、
NISA=「一発狙いのカジノ枠」
のように扱ってしまうと、
もっとも価値のある非課税枠を、自分で削ってしまうことになります。
勘違い⑥:プロと同じ情報を見ていれば、同じように勝てる
今は、誰でもプロと同じニュースや決算資料を読むことができます。
その結果、
「情報の格差は埋まった。あとは自分のセンス次第」
と思いがちですが、
ここでもうひとつ見落としがあります。
- プロと個人では、「評価されるルール」が違う
- プロは四半期・年次で成績を問われる
- 個人は、本来なら10年単位で待つこともできる
つまり、プロは
- 「短期で負けすぎないこと」
- 「ベンチマークから大きく外れないこと」
が重要になります。
一方、個人は
- 「生涯のキャッシュフロー」
- 「いつまでに、どれくらいの資産と時間の余裕が欲しいか」
を自分で決めて構造を作れます。
同じ情報を見ていても、
- プロ:ルールに縛られているぶん、どうしても短期寄り
- 個人:本来は、もっと長い時間軸で動ける立場
なのに、
プロのスピード感に合わせて売買しようとすると、
自分の強み(待てること)を捨ててしまうことになります。
勘違い⑦:投資は「お金を増やすゲーム」だけ
最後の勘違いが、いちばん根っこにあるものです。
「投資=お金を増やすゲーム」
もちろん、お金を増やしたいから投資をするのですが、
それだけをゴールにすると、
- 一発逆転を狙いたくなる
- 数字だけを追いかけて、生活が不安定になる
- 相場の上下に感情を揺らされ続ける
という状態に陥りがちです。
本来、投資は
「働かなくても生きられる“時間”を増やすための道具」
です。
- 労働収入で得たお金を
- 投資収入(資産からの収入)に少しずつ変えていき
- 「今の生活」と「将来の安心」を両方支える仕組みをつくる
この視点があれば、
- 一発逆転より、「損をしにくい構造」を優先する
- 目先の勝ち負けより、10年後の自分の時間をイメージする
- 「どれだけ儲かったか」だけでなく、「どれだけゆっくり眠れているか」も指標にする
という考え方が自然に出てきます。
まとめ
「勝ち続ける」より、「壊れない構造」を育てる
ここまでの内容を、短くまとめるとこうなります。
- 手数料が安くても、取引を増やしすぎれば逆効果
- 取引回数の多さは「上手さ」ではなく、「リスクの増加」になりやすい
- 長期投資は「放置」ではなく、「最初に設計して、あとは触りすぎない」もの
- 高配当・NISA・流行りのテーマも、構造を間違えると簡単に逆効果になる
- 投資の本質は、「お金」だけでなく「働かなくても生きられる時間」を増やすこと
時間を味方につける以上、
大事なのは、
「ずっと勝ち続けること」でも
「一発で当てること」でもなく、
「負けても人生が壊れない構造を先につくること」
です。
そのうえで、投資収入という“別のレーン”を育てていくと、
お金だけでなく、生き方そのものの自由度が少しずつ変わっていきます。