「VC(ベンチャーキャピタル)はスタートアップにお金を出す人」
間違いではありませんが、それだけだと一番大事な本質が抜け落ちます。
VCって何?
一言で言うなら、VCは
「未来を現実にする人たち」
です。
たとえば、研究室の中で「すごい技術」が生まれたとしても、そのままでは社会で使われません。
- 誰が会社をつくるのか
- どうやって売るのか
- どの国のルールで、どこまで許されるのか
- 人とお金と信用を、誰が集めるのか
この「現実への翻訳作業」ができなければ、
技術は存在しているのに、存在していないのと同じです。
ここにお金だけでなく、
- 経営への口出し
- 人材の紹介
- 方向転換の決断
- 政治・規制との橋渡し
までセットで関わってくるのが、VCです。
だから彼らが巨額の資金を集めるとき、
「次の10〜20年で、どんな世界を実装しようとしているのか?」
という視点で見ると、ただの「投資ニュース」ではなく
世界の設計図の一部が見えてきます。
AI と暗号技術はやる前提の領域
世界有数のVC、アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)は
Facebook、Airbnb、Slack などを初期から支えてきたことで有名です。
彼らが巨額のファンドを組成したときに出したメッセージは、とてもシンプルでした。
「社会が個人にできる最高のことは、チャンスを与えることだ」
そして、自分たちの使命をこう定義しています。
「これから100年のテクノロジーの勝利を、アメリカにとって確実なものにすること。
その起点になる“アーキテクチャ”が、AI と暗号技術である。」
さらにそれを、
- 生物学・健康
- 防衛・公共の安全
- 教育
- エンターテインメント
といった現実の分野に適用していくことが、彼らの仕事だと宣言しています。
ここで重要なのは、
- 「AI と暗号資産は儲かりそうだからやる」ではなく
- 「この2つを前提として、これからの社会を組み立てる」
というレベルで語っていることです。
つまり、
「やるか/やらないか」ではなく「どう実装するか」のフェーズにいる、という認識です。
暗号資産やAIは「マニアの遊び」ではない
では、この VC 的な視点は、個人投資家にとって何を意味するでしょうか。
それは、
暗号資産やAIは、
「流行っているから値段が動くもの」ではなく、
「各国・各企業が実装を前提に動き始めている技術」だ
という前提で見た方がいい、ということです。
価格がどう動くかは別問題です。
- ビットコインや暗号資産の価格が上がるかどうか
- AI関連株が短期的に割高かどうか
これを当てるのは、また別のゲームです。
大事なのは、
「社会の土台になる技術として採用される前提で、世界が設計され始めている」
という構造を理解しておくことです。
そのうえで、
- どこにどれくらい関わるか
- どのレイヤー(インフラ/サービス/周辺企業)に乗るか
- 自分のポートフォリオの中で、どれくらいの「枠」にするか
を決めるのが、個人投資家の仕事です。
VC と個人投資家は、そもそも別ゲーム
ここで勘違いしてはいけないのが、
「VCがAIと暗号技術に全力 →
自分も同じように集中投資すればいい」
ではない、という点です。
VC と個人投資家では、ゲームのルール自体が違います。
VCのルール
- 非上場企業に、大きく・長く・集中して投資する
- 10社中7〜8社は失敗しても、1〜2社が巨大に化ければ勝ち
- 経営に口を出し、人も連れてきて、自分たちで未来をねじ曲げにいく
- 失敗も含めて「ポートフォリオ前提」で設計されている
個人投資家のルール
- 上場株やETFが中心で、経営に口は出せない
- 生活費や老後資金と同じ財布からお金が出ていく
- 情報はいつも「あとから」入ってくる側
- 大失敗すると、そのまま生活そのものが崩れる可能性がある
だから、
- VCの「集中の仕方」や「レバレッジのかけ方」をそのまま真似する
→ 個人にとっては、ほぼ自滅ルートです。
一方で、VCから真似していい部分もあります。
- どの技術を「やる前提」と見ているか
- その技術を、どの産業にどう実装しようとしているか
- 「技術 → 実装 → 規制 → 社会」という流れで世界を見ていること
この視点は、そのまま「企業の未来を見るレンズ」として使えます。
企業の未来を見るとき、何を見るか?
VC的な視点を、上場株の世界に落とすとき、ポイントはこんな感じです。
① その企業は、どの「波」に乗っているか?
- AIそのものをつくっているのか
- その上で動くアプリケーションなのか
- 周辺のインフラ・デバイス・セキュリティなのか
- まったく別の領域で、AIや暗号技術を「使う側」なのか
「AI関連」「暗号資産関連」と一括りにするのではなく、
どのレイヤーで勝負している会社なのかを切り分けます。
② 技術だけでなく、「制度」とどう付き合っているか?
a16zのメッセージにもあるように、
AIと暗号技術は、国家レベルの政策と強く結びつく領域です。
- 規制と喧嘩している会社なのか
- 規制と一緒に新しいルールを作っている会社なのか
- 公共分野(ヘルスケア・教育・インフラ)とどう関わっているか
「技術 × ガバナンス × 事業モデル」の三点セットで見ていくと、
企業の未来像はかなり違って見えてきます。
③ その企業は「どんな未来を実装しようとしているか?」
売上や利益の成長だけでなく、
- その会社が、どんな未来像を前提に動いているのか
- それは、自分にとって共感できる世界観か
- その未来像が実現するとき、どんな事業ポジションでいたいのか
ここまで考えると、
「この企業にお金を預ける」というより、
「この未来に、少しだけ参加する」
という感覚に近づいてきます。
一発逆転ではなく、「前提を知った上での参加」にする
ここまで見てきた流れから分かるように、
- AI
- 暗号技術
は、もはや「ゼロから議論する段階」ではなく、
「やる前提で、どう実装するか」が問われている領域です。
だからといって、
- 貯金の大半をAI・暗号資産関連に突っ込む
- ひとつの銘柄で一発逆転を狙う
というのは、やはり構造として危険です。
やるとしたら、
- まずは生活費と投資資金を分ける
- 自分のビジネスや本業・複数の収入源で「土台のレーン」をつくる
- そのうえで、余裕資金の一部を「未来への参加チケット」として使う
この順番が現実的です。
そうしておくと、
- 価格が上下しても、生活は崩れない
- 「短期で当てる」モードから離れていられる
- 10年単位で、技術と企業の行方を見守る余裕が生まれる
つまり、時間を味方につけた投資ができるようになります。
(関連:お金と時間の設計については
「お金と時間をどう設計するか」参照)
VCが見ているのは「価格」ではなく「前提」
最後に、この記事のポイントを一行でまとめるなら、こうなります。
VCは、未来の「前提」に賭けている。
個人投資家は、その前提を知った上で、
自分の時間設計と資産設計にどう組み込むかを考える。
VCがどの技術に賭けているかは、「世界がどちらを向いて動こうとしているか」という強烈なシグナルです。
ただし、その“集中のしかた”を真似する必要はありません。
真似すべきなのは、
- 技術を「やる前提」と見ている視点
- 技術 × ガバナンス × ビジネスで世界を見ている構造
- そして、長い時間軸で社会実装を考える姿勢
AI と暗号技術は、
投機対象である前に、これからの社会インフラの候補です。
そのことを知ったうえで、
- どの企業の未来を信じて
- どのくらいの割合で
- どの時間軸で乗るのか
を決めていく。
それが、「VCと投資(企業の未来)」を、
個人の人生設計の中に落とし込むということだと思います。